あなたを抱きしめる、唯一の


「そろそろ休憩しよう」


 欲と自制でバラバラになりそうだった私は、その声が悪魔の囁きに思えた。


「私、もう少し考えてみます。もうちょっと違う言い回しを……」

「休憩して、効率悪くなるよ」


 笹山さんの有無を言わさない休憩宣言に、私は頷くしかできなかった。首や肩を軽く回している笹山さんに、何か話題を出したほうがいいんじゃないかと脳をフル回転させる。


「あの、これご存じですか」

「これ?」


 私が差し出したチラシに、笹山さんは目をパチクリさせる。

 チラシには、笹栗が大きくプリントされている。私が菅野さんに見せてもらったやつで、あの休憩の後もらっていた。


「新しいお菓子が入るの?」

「はい、笹栗デパートにちなんで、そのまま笹栗を使わせていただきました」

「へー、笹の葉みたくして、餡子と栗が入ってるのか……美味しそうだね」

「はい、こちら笹栗デパートだけの限定販売となっておりまして、五月中旬ごろの発売を予定しております。よろしければぜひ……」