私は意識して元気な声を出して、口の端を吊り上げる。後からもっと惨めな気持ちになってしまうのも承知の上で。
笹山さんは視線をあちこちに飛ばしながら、どこか上擦った声で口走った。
「……その、俺も英語が得意ってわけじゃないし」
フォローのつもりだったんだろう。笹山さんはすぐに「しまった!」と言いたげな顔になった。
「いえ、いいんです。私の勉強不足のせいですから」
「そう」
「本日もおいでいただきありがとうございます。ご注文はいかがいたしますか?」
強制的にこの話題を止め、笹山さんが何を注文するかに意識を集中させる。間違っても、帰りに英会話の本だか教室を探そうなどと考えてはいけない。
この人の優しさが、今はものすごく痛い。
その羞恥を知ってか知らずか、笹山さんはアーモンドのような形の目を私の目に合わせた。
「あの、良ければ俺で練習しませんか?」
私は思わず息を止めて笹山さんの目を見返す。
蛍光灯の光を浴びた瞳は、真剣そのものだった。



