あなたを抱きしめる、唯一の


 私は唇を噛み締めながら、干菓子の包装をするために用紙や袋を取り出した。そうだ、お客様にもお菓子の確認をしてもらわないと。


「あー……イッツオーケー?」


 なんかもういっそ笑えてきた。「ご注文の品はこちらでよろしいでしょうか?」って英語でなんて言うのか、全く思いつかない。

 案の定、お客様は首を傾げて笹山さんに向き直る。笹山さんがまた流暢に教えると、彼は笑顔で大きく頷き「イッツオーケー」と返してくれた。

 もう余計なことは何一つ考えないようにして会計を済ませ、袋を手渡すと「センキューソーマッチ!」と軽く手を振ってくれた。それに深々と頭を下げると、今度は笹山さんに顔を向ける。


「あの、先ほどはありがとうございました」


 自分でもわかるほど、声は強張ったものになっていた。笹山さんもそれが伝わったらしく、困ったような、申し訳なさそうな顔で頬をかいた。


「いや、あの……お節介、だったかも」

「とんでもございません、助かりました」