しかしここで「本当にお間違いないですか?」と声をかけるのもどうなのか。客と店員の線引きを超える行為ではないだろうか……。
悶々と悩みながらも身体は勝手に会計モードになる。自分が機械になったような感覚ってこんな感じなのかもしれない。
「他にご注文はございませんか?」
「ないです」
「では春の特別ギフトが一点で、三千八百五十円でございます」
彼は黙って五千円札を置いたので、預かり金をレジに入力して釣り銭とレシートをトレイに乗せる。
「千百五十円のお返しになります。ありがとうございました」
後から文句言われてもどうしようもないぞ、という言葉を飲み込んでお辞儀をした。……あ、ヤバい。伝票の確認をし忘れた!
恐る恐る伝票を手に取ると、笹山明人と名前も住所も電話番号もしっかり書かれている。よかった。次から気をつけよう。
私は胸を撫で下ろしながら、発送のための準備に取り掛かった。
これが、私が彼の名前を知った経緯。



