真夜中の「いただきます」

時計を見た研二が驚きの声を上げる。杏子も「そんなに経ってたの!?」と肩を大きく揺らした。楽しいことほど時間が経つのは早い。

「ご飯作ろっか」

「そうだな」

杏子と研二は立ち上がり、キッチンへと向かう。映画の際にお菓子を摘んだだけの胃袋は、「きちんとした食事を取れ!」と叫んでいる。エプロンを身に付けた後、杏子は冷蔵庫の中身を確認した。

「おっ、しめじが期限切れそうだな〜。ほうれん草もあるし、ベーコンもある。牛乳も結構あるな」

「杏子先生、夕食のメニューは何を作るおつもりですか?」

「今日のメニューは、クリームパスタとレタスのコンソメスープです!」

杏子が笑顔でそう言うと、「おいしそ〜!!」と研二も目を輝かせる。しかし牛乳のパックを杏子が冷蔵庫から取り出すと、「夜中にクリーム系って罪だよな〜」と言った。

「ほうれん草やきのこが入ってるからプラマイゼロだよ!」

杏子は玉ねぎを薄く切り始めた。その隣で研二もベーコンを切る。コンロには二つの鍋が火にかけられている。一つはパスタを、もう一つはほうれん草を茹でるためのものだ。