明日から世間はゴールデンウィークである。社会人も学生も待ちに待った長期連休となる。それを控えた今夜、貝森杏子(かいもりあんず)は胸を弾ませていた。並んで座っているソファには、同棲している恋人の粥川研二(かゆかわけんじ)がいる。

「研二くん!今日やることはわかってるよね!?」

「もちろんだよ。徹夜でしょ?」

研二のその言葉に杏子は目を輝かせながら頷く。二人は社会人ではなく大学生だ。学生ならばアルバイトがあるのでは、と思う方もいるだろうが今日の徹夜のために明日はアルバイトのシフトを入れていない。

「それで?まずは何をするの?」

研二が訊ねる。時刻は午後七時を過ぎた頃だ。夜はまだ始まったばかりである。杏子は「フフッ」と笑いながらあるものを取り出した。

「最初はこれを観ようと思いま〜す!!」

レンタルビデオショップの袋を杏子は研二に見せた。二人が住んでいるアパートの近くにその店はあり、たまに古い映画を観るために借りることがあるのだ。