あたしはあの女が嫌いだった。
 それも積極的に。

 勿論、誰にも言ってない。
 仲のいい友達にも、家族にも。


 ずるい、って思ってた。
 あの女の家は、位こそは伯爵位だけど。
 父親は王立騎士団のNo.2で、母親は王妃陛下の友人。

 兄貴は第3王子の側近。
 そして、同い年の婚約者は侯爵家の次男で、これも第3王子の側近。
 おまけに親友は第3王子の婚約者の公女、って!



 あの女の肩書きは伯爵令嬢でも、実質は王家にどっぷり浸かってる。
 これがずるくなかったら、何だって言うのよ。




 最初は略奪するつもりはなかったの、これは本当。
 ただちょっとだけ、イケるかな~って、魔が差したんだ。



 高等部の2年になって、あの女と同じクラスになって
『気分わるっ!』って思ったけど、特に関わりはなかった。
 こっちが思ってたより、あの女も偉そうじゃなかったけど、媚を売ってまで仲良くしたくないしね。


 だけど、あたしの周りではあの女と仲良くしたがるやつも多かった。
 見た目がね、女受けするって言うか。
 背が高くてスタイル良くて、キリッとした男顔。


 同じ制服着てても何か違うんだよね。
 ああいうタイプは得だよ、あたしなんか小さいから『可愛い』しかないけど。
 あの女は『美人』『格好いい』だし、何なら背が高い男からなら『可愛い』も貰えたかと思うし。


 あの女の婚約者はちょっと小柄で身長はアレだけど、育ちの良さが顔に出てた。


 あの女と婚約者はラブラブな感じじゃないのは見ててわかるけど、仲は良かった。