「このまま、エヴァと結婚しても、彼はハロゲート男爵令嬢を堂々と妾にしたかも知れませんわ」


 テディも兄も返す言葉が見つからないみたいで。
 私も、学生の頃の甘酸っぱい思い出くらいにしてくれたら、我慢できるけど、最初からの妾は嫌だなぁ。
 いくら政略でもね。


 エリィは見た目ふわふわな乙女なのですが、その本性は……
 味方なら、彼女ほど頼りになるひとはいないけれど。
 敵に回ったなら、彼女ほど恐ろしいひともいない。



「テディ、貴方が嫌なら私から王妃陛下にお願いしても?」

「……わかったよ、俺から国王陛下に話すから。
 母上と結託するのは勘弁して」



 国王陛下が王妃陛下に頭があがらないことは、公然の秘密なのです。
 この分だと、テディも国王陛下と同じ道を辿ることは明白ね。



① とにかくあのふたり(特にルーカス) に気付かれないように。

② 明日のパーティー開始まで、4人の秘密にしておくこと。
 特にカイルは直ぐに顔に出てしまうシンプルマインドなひとだから。

③ 親にも絶対に言わないこと。
 ルーカスのご両親と私の両親は大変仲がよろしいのです。
 今回パートナーを断られたことは、まだ両親には話していませんでした。



 何故ならエリィが『もしルーカスが何か言ったりしてきたのなら、ご両親には話さず、まずは私に相談して』と、言ってくれていたからです。


 それで私は図書室に彼から呼び出された後、エリィに直ぐに伝えようと思っていたのですが。
 実は彼女はふたり(ルーカス&ミシェーラ、通称ルーミシェ)に呼び出された私を心配して、隠れて図書室に付いてきてくれていたのでした。


 ルーミシェが絡み合うようにして出ていった図書室の片隅で。
 エリィが私に言ったのです。



「婚約破棄のサプライズなんて、本当に舐めてるとしか思えない!
 さーて! あいつらに、ざまぁ致しましょうか!」 



 ざまぁ、それは昨今流行りのコンテンツ。

 舐めた真似をするやつらに、正義の刃を振り下ろせ!
 だな!