いきなりの名指しに、ルーカスは見事なくらい慌てふためいています。

 ホント笑えるわ、もう様なんて付けない。
 こいつも呼び捨てだ。



 性根が腐っているやつなので、呼び出された私を見て『お前、何をヤラカシた?』なんて、テディの後ろでニヤニヤしていたのです。
 まさか、自分にお鉢が回ってくるとも知らずに。



『ルーカスに気付かれないように』


 それをエリィが昨日力説して。
 テディとアレンを説得してくれたのも彼女でした。


 人前で、それも卒業記念の宴という公式の場を借りての断罪は……と、二の足を踏むテディと兄にエリィは訴えてくれました。



「ルーカスはエヴァに、卒業の記念にサプライズをあげる、なんて言ったのよ?
 貴方達もご存じでしょ? 卒業式後に婚約破棄を宣言するバカが一昨年くらいから出て来ているのを。
 真実の愛とやらを邪魔する悪役令嬢は、皆の前で婚約破棄を告げられるのよ。
 小説から流行りだしたらしいけれど、バカなルーミシェはそれをするつもりだと思うの。
 婚約破棄もやむ無し、とエヴァを悪役にしたいのよ。
 あちらからやられる前に、こちらから先にやるだけの話だわ」

「……」

「あの学園でのルーカスとミシェーラ、貴方も目に余る、と仰っていたじゃないの?
 側近って、主の身辺警護も兼ねているんじゃないの?
 ルーカスは貴方のお側を離れて、いちゃついていたのよ。 
 貴方の許しは得ていないわよね?
 これって、王族を蔑ろにしすぎじゃない?」

「……」


 王太子殿下と、スペアと言われる第2王子殿下には、王家は影をつけていましたが、第3王子のテディには、それは付いていなくて。
 彼はエリィとの結婚後は王籍を離れる身なので、それ程……と言うわけです。


「アレン様、ルーカスを可愛がっていた過去は忘れるべきです。
 彼は貴方の妹を裏切ったのです。
 それは貴方のお家を、伯爵家を侮っているのです。
 もし、彼が本当に誠実な人ならば、まず自分のご両親に婚約者以外の女性を愛してしまった、と打ち明けるべきでしょう?
 それもせずに、卒業パーティーに不貞相手を連れて出席するなど」

「……」