「そう言ってもらえたら、少しは気が楽になるけれど……
 ケイレヴが誰かに言うはずはないから……
 侯爵夫妻も息子が俺を嵌めたことは知らなかっただろうね。
 俺は両親以外には話していないし。
 母は内心ではケイレヴに対して煮えくり返っていたが、ハモンド侯爵夫人と表面上は変わらず、付き合っていた。
 君とエリィにテディの権力を使いやがって、と言ったルーカスに君は男だって使っている、と答えた……
 その通り、俺も父の権力に助けられた。
 ……軽蔑されても仕方がないな」

「軽蔑なんてしない……
 貴方は盗作疑惑や停学と言う罰も受けた。
 当時は学生なんだから、実家の庇護は当然でしょう。
 それがこの先もずっと続くのならアレだけど、大切なのはこれからだと思う」



 ケイレヴ様はお父様の権力も、実家からの庇護も、婚約者の支えも失った。
 ライオネルはそんな彼を、これ以上追い詰めることはしないだろう。



「君の事が昔から好きだ。
 あの頃は好きだった、じゃなくて、今もずっと好きなんだ。
 だからこそ、ルーカスが君を大切にしてくれるなら、と見ているだけでよかった。
 それは信じて欲しい……けれど。
 いつかルーカスが消えてくれたらいいのに、と友人の顔を見せながら望んだことは本当だ」



 ライ、貴方の本当を、聞かせてくれてありがとう。


 いきなりプロポーズされてから、初めて。
 私はライオネルと目を合わせて微笑むことが出来た。



「……やっと笑ってくれたね」


 ライオネルには気付かれていたのね。
 突然のプロポーズに、私が戸惑っていたこと。


 ライオネルは初めて会った頃から、兄のようなひとだった。
 まあ、厳密に言うと『カッコいい親戚のお兄様』のようなひと。