ライオネルがルーカスを嵌めた?

 マリナ様の仰られようから察すると、ルーカスはライオネルから借金をしていて、それをきっかけに横領に手を染めた?


 思ってもみないことを聞かされて、私の顔色が変わったことにマリナ様は気付かれたようです。



「何もご存じ無かったの?
 だったら、早くご確認なさって。
 このまま小公爵様とご結婚されても、貴女は幸せになれないわ」



 こちらに戻ってくるライオネルの姿が見えたのか、それだけ言うとマリナ様は慌てて私から離れて行きました。




「エヴァ、今のご令嬢はケイレヴ先輩の婚約者だったひと、か……
 弟がスタイナー家のご子息と仲が良くてね。
 彼女本人には招待状は出していないけれど、彼と来られたんだね」


 ケイレヴ様はライオネルとは同じ領地経営科の一年上の先輩で、ふたりは親しくしてたけれど。
 いつも憎たらしいくらいに落ち着いたライオネルが何か慌てている。


 さっき、マリナ様が言ってたことは、本当のこと?
 他の人達には聞かせたくなくて、彼の腕を取って誰も居ないスペースを探しました。



「これからは家名で呼ぶように、ってマリナ様から言われたの。
 ルーカスのことは貴方と私がふたりで企んだ、と思っていらっしゃるの。
 貴方からの借金がきっかけで……
 彼を嵌めた、と仰っていたわ」

「……」


 時間が経って、周りの後押しもあって。
 このままライオネルとの距離が近付いて、婚約が結ばれたら。
 却って尋ねにくくなる。


 彼の語る理由が受け入れられなかったら、今ならまだ離れることは容易い。