ちょっと心配になった私は、隣にいる婚約者のテディを見た。


 だって、既に女の子の扱いに慣れていた8歳のライオネルが押し黙り、私達と同い年のお喋りなルーカスは赤面していて。
 1つ年上のカイルは瞳をきらきらさせて「僕ん家の犬にそっくり!」なんて、エヴァに構いに行っていた。


 だから、貴方も? って……
 そしたらテディは私の手をぎゅっと握ってくれた。
 ……『心配ないよ』って。


 それで私は、エヴァに、優しくなれたの。
 もし、テディがあの時、エヴァに興味が有りそうだったら。
 お父様にお願いして消していただくつもりだった、なんて話は……お墓の中に持って行くね?


 ◇◇◇


 エヴァとの婚約に向けての初動は早かった癖に、そこから拗らせて素直になれなかったルーカス。

 あいつに先を越されたライオネルは仕方なく、お兄様ポジションについたけれど、エヴァには本物の兄のアレンが居るから、その存在は中途半端。

 カイルなんて、もっと可哀想に……
 1つ年上なのに、エヴァからは弟みたいに思われてて。



 それでもふたりは、エヴァとルーカスを応援してたのに、あの馬鹿は浮気した。


 不思議だったのは、そういうことを一番許さなさそうなライオネルがルーカスのヤラカシを黙認してたこと。
 それ、って……まさか、ね?


 まあ、エヴァも婚約者が居なくなって。
 悪いのは不貞して、その女に貢ぐために横領したルーカスでしょ!
 なのに、エヴァが悪者になって、納得出来ないことに彼女の花嫁市場での価値が下落してて。


 こうなったら絶対、自由に会えていたカイルが素早く動くだろうと思っていたのに、やっぱりカイルはカイルだった。
 どうでも良いことばかりエヴァに伝えて、肝心の自分の気持ちは伝えずにいた。


 だから、またライオネルに先を越されて……
 情けない、ったら!