私はフェルフランのお祖母様の所へ行くことに致しました。

 このローマイア王国から見て、西に位置する西方3ヶ国で一番商売盛んなフェルフラン公国。
 興国以来の名家の当主、グランジ大公の元でフェルフランは独自の文化を花開かせていました。



 私の母は元はフェルフランの商家の娘でしたが、留学先のローマイア王立貴族学園で王妃陛下や父と知り合ったのです。
 そして父と恋に落ち、王妃陛下ご実家の侯爵家のご縁で、ローマイアのリンク伯爵家の養女となり、父との結婚が叶いました。


 この国では貴族ではない者は貴族と正式に結婚出来ないし、片方が平民のままでは、そのふたりの間の子供は嫡子とは認められず、家門を継げないよう決められていたのでした。


 ですから、兄と私には3人のお祖父様、お祖母様がいます。
 今回は母の実家の『フェルフランのお祖母様』からのお誘いです。



「丁度、卒業したら一度公国へ遊びに来なさいと、誘うつもりだったから、って」

「……」


 私がフェルフランへ旅立つ5日前、幼馴染みの皆がウチに集まってくれましたが、ライオネルは遅刻のようです。



「…セブンがファイブになってしまった……
 遊びに行くだけ、だよな?」

 チームリーダーのテディが呟きました。
 いつも沈着冷静、サブリーダーの役割のライオネルはまだ来ていません。
 カイルと兄アレンのふたりはずっと無言だけど……

 紅一点になってしまうエリィが私を抱き締めます。



「エヴァが望むなら、変な事を言うやつ全部、暗殺してやるのに」


 だからね!貴女はそんなことは言っちゃダメな立場のひとだよ?
 社交界の野郎共が居なくなっちゃうよ?


 ちゃんと食べてる?
 ちゃんと眠れてる?
 なんか痩せたみたいだよ?
 私だけ逃げるみたいでごめんね?



 私は知っています。
 行ってしまう私より残される貴女達の方が辛いこと。


 私も…あんなに腹を立てたのに、ルーカスが行ってしまって辛かったから。