「エヴァ、俺は…」

 いつも大声のカイルが珍しく口ごもっていて。
 そうだった、このひとは口が達者な人間が集まったセオドア・セブンの中では珍しく、言葉より行動を優先するひと、だ。


 単純だけど、頑固。
 簡単だけど、真っ直ぐ。 


 そこに遅れてアレンがやって来ました。
 遅いよ!代わりにカイルの相手をしたから、事故物件なんて聞かされました。


 兄は1ヶ月の自宅謹慎処分が、週明けに解けることになっています。



「エヴァ、母上がお呼びだ」


 私が立つのに合わせて、カイルも立ち上がりました。
 こういうところはちゃんとレディー扱いしてくれるのね。


「母上から聞かされて慌てないように、先に言っておく。
 多分、お祖母様の所へ行く話を聞かされる」

「……」

「お前の評判が悪過ぎてな」


 反対に、前財務大臣のハモンド侯爵の評判が良すぎて。



 私怨であの御方を失脚させた女。

 親友を使って、国王陛下と第3王子殿下を丸めこんだ女。

 他の女性を愛した婚約者に暴力をふるった女。

 心変わりを受け入れられず、記念パーティーを台無しにした女。

 幼馴染みをバッサリ切り捨てた女。

 ……さすが半分は平民の女。




 カイルが言ってた、出るわ出るわ、の女だものね。

 改めて自分を省みたら、私はまさしく『事故物件令嬢』だ。



「母上からの手紙を読まれて、今回のことをご心配されたお祖母様からの話だ。
 父上と母上が望まれている訳ではないから。
 お前は断ることも出来る、からな?」