あ~ぁ、もうその先は言わなくてもいいよ。

 はいはい知ってるよ、カイルが私をどう思ってるか、って。



 初めて会った日。
 私達7人 (テディ曰く『セオドア・セブン』) が、初めて揃って顔を合わせた日。

 5歳の私の髪を引っ張った6歳の貴方は叫んだの。
 今から思うと、小さい頃からよく叫んでいたわね。


「お前、僕ん家のグレートマグナムにそっくりだ!」


 後からカイルのお母様が教えてくれました。
 グレートマグナムは、カイル・グリフィン・バーンズのおウチで飼っている黒毛、灰青色目の子犬なんだって。
 マグナムから産まれた子犬のグレートマグナム。


 あの日から早くも13年が過ぎました。
 父の同僚だったカイルのお父様は、私の父の上役になりました。
 カイルは自分の事を僕ではなく、俺と言うようになりました。

 
 子犬のグレートマグナムも儚くなり、今は孫のグレートマグナムなんたらアルティメット(略してアルティ)が、その見事な黒毛をなびかせて駆け回っています。


 そしてカイルが私を見る視線は、子犬のグレートマグナムを懐かしむ優しい眼差し。



 だからね、わかっているから18歳の乙女に向かって犬に似ている話はしなくていいからね。
 しかしながら、亡くなった愛犬を懐かしむカイルにそれを告げられず。


 私達ふたりの間には、沈黙が流れて。
 何か気まずいわね。
 カイルがテーブルの向こう側から、私の方に身を乗り出してきて。



「お、お、落ち着いて聞いてくれないか!」


 顔の近くで叫ばないでね!
 唾が飛んできたじゃない!
 どうしたの?


 私は落ち着いてるから、貴方が落ち着いてね?