さて父の怒りが、彼の目を覚ますことが出来なかった私に向くのか。
 それともルーカスに向くのか。


 アレンが私の頭をぽんぽんしました。
 兄が私にその様に接するのは初等部以来でした。




 そして……私達兄妹がなんとなく良い感じで目を合わせたその時、音楽室に怒れる雄牛が現れた!

 黒い雄牛はずんずんやって来て、そのまま。
 アレンに突っ込んで、吹っ飛ばした!



 テディ、何で貴方はここにいないのよ?
 もしかして、この場にいたくないからウロウロしていたの?


 保護者がいつ到着するかわからないから、なんて言ってたのは、説明するからではなくて、ウチの父から逃げてたのね!



「お前、知ってて黙っていたのか!早く答えろ!」


 いやいや、お父様、お兄ちゃんは貴方に飛ばされて、まだ倒れてます。
 直ぐに返事出来ません。

 バッファローに体当たりされたアルパカを想像してみてください。



「ルーカスが王子の予算に手を付けたこと、もっと早くに俺だけにでも相談していたら!」

「すみません……」

「今更だな、半年も見逃していた。
 ファルガー家は……もうお終いだ。
 せめてセージに知らせていたら……
 財務を扱う者は心身綺麗でいなくては、と常に己と家族を律していたのに!」


 セージとは、ルーカスのお父様の御名前です。
 財務を扱う者はと、常日頃から仰ってお金に関してはとても厳しいお考えをお持ちの方で、ルーカスや彼のお兄様に対しても無駄な出費や派手なお付き合いを禁じていました。



 ミシェーラにプレゼントしたドレス一式。
 ルーカスに自由になる大金はなく、どうしてそのお金が必要なのか、お家の方に説明出来る訳もなくて、彼はテディの予算を横領したのです。



「陛下からは本日より1ヶ月間の謹慎を命じられた。
 お前達はもう……セオドア殿下に付くことはない」