夏休みに入る前にはルーカスと繋がりを持ちたかったから、いつもの他の奴等が居なくて、彼が1人の時には積極的に話しかけた。


『いつもどこで遊んでいるんですか?』とか、
『その腕時計とってもカッコいいですよね!』とか。


 いくらアホでも、俺に興味があるんだな、ってわかるようなアプローチを繰り返して。

 そしたらね、夏休みに1度遊びに行こうか?って誘われたから、大袈裟に喜んで見せたんだ。



 そこからの展開は早かったな~。
 1度会えば、2度3度。
 別れ際には絶対に、次の約束を取り付けた。


 なかなか手を出して来ないから、あたしから手を触れたら直ぐに握り返してきた。
 あの女とはそっち方面では進展してなかったんじゃないかな。
 言い方アレだけど、我慢してたのねー。
 がっつかれた。


 それを上手にあしらって、また誘って、ちょっと進んで、次は焦らして……
 ルーカスをコントロールしたの。


 関係を進めたい彼は私に会いたがって、この頃はお誘いがうるさいくらい。


 ……でもね、身体だけじゃなくて、気持ちも貰わなきゃ、だから。
 ルーカスの耳に毒を吹き込んだの。



『エヴァは欲しいハイヒールがあるけど、仕方ないからあきらめたんだって』


 あの女のことをエヴァなんて、愛称で呼んだことはない。
 そんなに親しくないもの。
 当然、勝手に作って言っただけ。


 わざとらしく聞こえないように『仕方ないから』の所を強調してね。
 ルーカスとの婚約も『仕方ないから』ってあの女が言ってる、と深読みして受け取られるようにね。



 案の定、その一言で充分だった。
 こっちだってね、夏の間だけの遊び相手は嫌じゃない?
 その時点では、その可能性の方が高かったしね。



 あたしを好き、と
 あの女を嫌い、と。
 その両方が欲しくて。


 ルーカスの顔に表情がなくなったのを見て、もうこれだけでいいか、と判断したの。
 あれこれ続けて言うより、一言だけ。

 あの女の悪口だと思われないように。