そして下校時間になっても、まだ雨は降り続いていて。

 この日はウチの馬車が迎えに来ていて、ルーカスが私を呼びにクラスに来た時……


 おずおずと。申し訳なさそうにミシェーラが私に頼んできました。


「申し訳ありませんが、図書館まで乗せていっていただけませんか?」


 ◇◇◇


 小柄なミシェーラ。
 ミルクティブラウンの髪と、同じく薄いピンクの瞳の彼女は儚げな乙女に見えた。


 それに比べて大柄な私は、黒い髪にアッシュブルーの瞳。
 ミシェーラと私の、見た目は正反対。



『学年末試験に向けて借りたい本があるので、帰宅する前に学園近くの図書館まで徒歩で行く予定でした。
 帰りは図書館へ馬車を迎えに寄越してほしいと、時間を決めて家の者に頼んで登校してきたのですけれど、雨が降り止まなくて……
 図書館で降ろしてくださいませ』

 そう説明するミシェーラを私は信じて。


『図々しい事ですが、お願い致します』と。


 ホント、演技力凄いよ。
 小さくなって遠慮しながら頼んでくる彼女が、物凄く気の毒に思えた。
 早速、さっきの御礼を返せるわ、って。
 バカな私もルーカスも信じちゃったの。



 今から考えたら、この日は登校前から1日中雨だったのに。
 下位であろうと、貴族のご令嬢が図書館まで歩いていくなんて無謀なこと、有り得ないのに。


 私に近付く為……
 ううん、ルーカスに近付く為の演技にまんまと騙されて。
 今更な、話だけどね?


 それで、ルーカスとミシェーラは知り合って。
 恋に落ちて……

 彼は『真実の愛』に出会ったの。