元々、元婚約者のルーカスと不貞相手のミシェーラを引き合わせてしまったのは私でした。

 テディとエリィ、ルーカスと私は4人1組で学園の毎日を過ごしていました。


 テディとエリィはラブラブだったけど、ルーカスと私は友人以上の恋人未満。
 でも、間柄は幼い頃からの婚約者で。
 父親同士が学生の頃から仲が良くて、私達を結びつけたから。


 お互いに燃えるような気持ちがなくても、周囲からは祝福されて結ばれて、終生心穏やかに過ごしていける相手だと思っていたのです。
 ところが。


 それは高等部2学年の学年末試験を控えたある日のこと。
 私は同じクラスの、ミシェーラ・ハロゲートに声をかけられたのです。



 その日は朝から雨でした。
 お昼休みが終わって自席に戻った私は、机の中に入れていた筈のペンケースが見つからなくて、困っていました。

 何度も机の中を見ては、ごそごそとしている私に隣の席のミシェーラが声をかけてきました。


「どうなさったの、マッカラム様?」

「うるさくしてごめんなさい、ペンケースが見つからなくて」



 今から思えば。
 多分、彼女が隠したか捨てたのです。
 ですが、当時はそんなこと思いもしません。
 だって私達は同じクラスでしたが、特にそれまで接触もなく……


 私がミシェーラをなんとも思っていなくても、彼女はそうじゃなかったって、だけの話ね?


「大変ね。次の時間は小テストですわ。
 よろしければ、こちらを」


 バカな私は彼女が差し出してくれたペンを借りてしまった。


『これまで大して仲良くしていなかったのに、なんと親切な御方だろう』なんて、思いながら。

『この親切な人に、何か御礼をしなくっちゃ』なんて、ね。