国王陛下と学園長がホールを出ていかれたのを見送って。

 テディは壇上から降りました。
 ライオネルとアレンも降りて、私達は6人でルーカスの周りを囲みました。


「沙汰を待って、罪を償ってこい。
 そして……」

 テディがルーカスに声をかけた時、顔を上げたルーカスは私を睨み付け。



「デカ女、満足か?」

「ルーカス!」


 兄のアレンが私を庇って、彼からの視線を遮るように間に立ち、怒鳴りました。
 カイルがルーカスを引っ立てようとしましたが、渾身の力を込めてルーカスは踏みとどまっていました。


「おい、満足かよ? デカ女!
 お前のその格好はなんだよ!ますますデカいじゃないか!
 笑わせてくれるよな!」



 ……そう、私はデカ女。
 そして、ルーカスはチビ男。
 私達の身長は3センチ程、ルーカスが高いだけでした。


 だから私は今まで、髪を結い上げず、ハイヒールも履かなかった。
 ルーカスよりも少しでも低くなるように、気を付けていた。


 だけど今夜は、もう遠慮なんかせず背筋を伸ばして。
 ずっと履きたかったハイヒールを響かせて。
 貴方の前に立ったのよ。


 デカ女上等だ!



「おい、エヴァンジェリン・マッカラム・ロドリー!
 お前は自分だけじゃ何も出来なくて、エリィにお膳立てして貰っただけだよな?
 エリィだって自分の力じゃないよな?
 お前らテディの権力を借りてやり返しただけなのに、偉そうな顔すんな。
 俺を見下したこと忘れないからな!デカ女!」


 それを聞いたテディと。
 皆の顔が歪み。


 私は兄の背を押して、怒りで真っ赤になっているルーカスの襟元を掴みました。


「権力を使って何が悪いの、チビ。
 男だって、使っているじゃない。
 負け犬の遠吠え、聞かせてくれてありがとう、チビ。
 でもね、遠吠えと言うより、子犬がキャンキャン鳴いてるみたいで、可愛いわね、チビ」


 ルーカス、貴方は3回私をデカ女と呼んだ。


 だから私も同じく3回チビ、って呼んであげるね。