私とエリィからの視線に耐えられなくなったテディの声はいつもと全然違って、とても小さなものでした。


「ライオネルが最初に気付いて……
 カイルは知らない」


 ここでも何も知らされていないカイルが可哀想なのに、反対に幸せ者じゃないか、と思えてきて。



「どうするつもりか静観していよう、とアレンにも相談して3人で決めた。
 事が公になればルーカスひとりの問題じゃなくなる。
 大臣の進退に、発展するし……」

「陛下はご存じなの?」


 正義の女神エリィの声も小さくて。
 それを聞いたテディはますます俯いて。


「陛下にはまだ……
 俺には内緒と言うことにして、ライが確認したら監査までには必ず補填する、とルーカスが言ったから」





 テディから話を聞かされた国王陛下は怒りを見せず、皆に下がるように仰せになりましたが、その後、微かに謁見の間からは陛下の慟哭の声が漏れ聞こえていたそうです。


 陛下におかれましても、ルーカスは幼い頃から可愛がってきた友人の息子であり、また息子の友人でもあったのです。



 罪を暴かれたルーカスはカイルに腕を取られ、跪かされました。



「これはっ、横領なんかじゃない……
 ちゃんと返すつもりだった!
 ライが待っててやる、って言ってたから!」

「ルーカス、お前何やってんだよ……」


 ルーカスよりも、押さえつけているカイルの方が泣きそうな顔をしていました。