「お前がこの場で言え、と口にしたのを忘れるな。
 ひとつ、お前は義務を放棄した」

「義務を放棄?」

「王子である私の身を、側に居て守ること。
 お前に課せられた義務なのに、この1年間お前は私の側を離れて、そこの女と常に過ごしていた」

「……ですが! 殿下は見過ごされていたではないですか?
 私はそれを許されているのだと!」

「何度か、私は注意をしただろう?
 いつか、まともに戻るだろうと、大事にしたくなかった。
 だから、個人的に注意をしたんだ。
 いつか、自分で気付いて戻ってくると思っていた」


 そう言ったテディは少し悲しそうで。
 そうなの…私もね、みんなみんなそう思って。
 注意はしたけど、2人を引き離したりしなかった。



 学生の間だけなら目をつぶってあげる。
 大人になった時に、あんな時もあったな、って。
 私達に男女の愛はなかったけど、幼馴染みの情はあったから。



 だけど。
 ルーカス、貴方は私達を裏切った。
 調べたの、貴方がミシェーラに夢中になって犯した罪を。



「そんな理由で、婚約解消で済む話を破棄なんて大きくして、この場に持ち出されるなんて。
 デズモンド嬢を通じてマッカラム嬢から頼まれたのでしょうけれど、あくまで私のプライベートな話です。
 婚約者からお願いされたから公私混同なんて、殿下らしくないですね。 
 後日別の場を設けていただけたら、私の心中をご理解くださると信じております。
 陛下からも、殿下に何とか仰ってください!」


 平気そうにしていても、焦っているのね。
 だから、口数も多くなる。
 あんたの罪を皆に晒したくなかったから、追って沙汰を、とテディは言ったのよ?


 それを今この場で詳しく、と言ったのはあんたでしょ! 
 なのに、旗色が悪くなりそうなのを察知したら、いきなり後日別の場を、と?


 それもあろうことか、血迷って直接国王陛下に声をかけるなんて!