青扇学園は学年を越えた交流があるらしく、紗空が一年生のときに三年生だった彼女の夫やレストランバー氷の月にいた面々もしっかりと覚えているという。

「見てほら、これが素顔の神城さんよ。プライベートで燎さんたち男だけでいるときは、今と同じね」

「本当だ」

 今よりは幼さが残るが、そのまんまの彼がいる。

 打って変わって明るい陽気な笑顔の彼だ。

 写真は幼稚園の頃からあって、目にした途端息を呑んだ。大空や翔真に驚くほど似ている。特に笑顔なんて大空そのままではないか。

「茉莉、『神城技研工業』 ってわかる?」

「テレビCMで見る神城技研工業?」

 だとすれば、有名な一部上場企業である。

「そう。今の社長は航輝さんのお父様だそうよ」

 ギョッとした。御曹司だとはわかったが、まさかそんな有名企業だとは。お父様が社長というだけでなく、神城と名がつくからには創業者一族ということか。

「――お父様、パイロットじゃないの?」

 確か紗空は、旧華族の家柄で父親も兄もパイロットだと言っていたはず。

「元パイロットなんですって。お父様は五十歳でパイロットは引退したそうよ。航輝さんのお兄様もいずれは引退して家業の方を継がれるらしいわ。神城家は――」

 紗空の話は途中から耳に入らなかった。

 神城技研工業は車だけじゃなく飛行機も作るから、パイロットという職業は無関係じゃない。なるほどと思う反面……。

「あ、あはは」と思わず笑った。

 何度聞いても信じられない。

もう、どこまで遠い存在なの。遠過ぎて、笑うしかないよ……。