双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~

 ふと母が持ってきた縁談が脳裏を過る。

 私はもう既婚者だと言ってしまおうと思い立ったが、浅はかな嘘はどこかで墓穴を掘るものだ。余計なことなど言わず、ぼろが出ないうちに、さっさとこの場を去るに限る。

 彼に向き直って、「別にいいじゃないですか。そんな昔の話」と、あえて冷たく言い捨てた。

 紗空のところに行こうと思い、首を回すと心配そうに私を見ている彼女と目が合った。

「じゃあね」

 そそくさと彼に背中を向けた途端、しっかりと腕を掴まれる。

 一歩私に近づいた彼は、たしなめるように低い声で「茉莉」と呼ぶ。

「別にいいってなに? 俺は君とちゃんと話がしたい」

 恐る恐る振り返ると、彼は真顔だった。むしろ怒っている。

 いつだって微笑んでいるような目もとだけれど、笑ってはいない。その証拠に頬も口も硬い表情だ 。

 強い眼差に、一瞬息ができなくなる。

「だ、だって……」

 その先の言葉がでない。