『そうです。どんなに気をつけても何度も再発するようになって』
でもなんでその病名を? 普通は耳にしない病名のはず。
私の疑問が伝わったのか、彼はたまたま読んだ小説にでてきたと、肩をすくめた。
航空中耳炎はパイロットやCAの職業病のひとつだ。特に国内線は多いと聞く。国際線よりも頻繁に、気圧の上昇と降下にさらされるからだろう。それでもならない人はならないし、一度なっても気をつけていれば再発しないという人もいる。
でも私の耳はダメだった。今回のように時々飛行機に乗るくらいなら問題ないが、国内線CAの激務には耐えられない。
『あなた顔色がよくないわよ?』と、お客様に言われたのがきっかけになり、私は退職を決断した。
『なるほど。それは残念だったね……』
彼はとても優しい声で、泣いている私の肩を抱いて。私はそのまま彼の胸に顔をうずめた。
『もう体の方は大丈夫なの?』
『耳も時々飛行機に乗るくらいなら平気だし、軽かったのもあるんですけど』
『そうか……』



