まず茉莉の母が、鶴見の愛人のマンションの前で鶴見を呼び出した。

 速攻で駆けつけた鶴見は、一緒にいた俺が脅迫した相手だと知り、最初は激高していた。

 だが、その威勢も束の間だった。近くのカフェに入り、浮気に使い込み、娘を売り飛ばそうとしたことやら俺への脅迫。これまでの鶴見の悪事を証拠を片っ端から突き付けつけると、最初の元気はどこへやら。

 虚勢を張るクズほど、こうなると弱いものだ。赤い顔は真っ青になった。

 そして、俺たちの目の前で茉莉に電話をかけさせた。

「もしもし、茉莉か。俺だ、すまなかった」

 俺と茉莉の母に睨まれて、鶴見は続ける。

「もう電話はかけない。二度と迷惑はかけない。――本当に、すまなかった」

 電話を茉莉の母が受け取り、代わる。

「茉莉、今までごめんね。お母さん離婚するの。もうこの男の話は無視していいからね」

 電話をしている間に、鶴見に弁護士の連絡先を渡す。

「今後は弁護士と話をしてください。お義母さんとの離婚についても。一切、直接話はしないように」

 口ごもる鶴見に、「脅迫で訴えられたくなければ、守るしかありませんよ」と釘を刺す。

 鶴見は体を震わせていた。

 これでもう大丈夫だ。東京へ帰ろう。

 茉莉と子どもたちのもとへ。