「先代の女将が相当な食わせ者だったらしい。外面だけよくて、身寄りのない使用人を言葉巧みに集めて奴隷のように扱っていたそうだ。鶴見氏については先妻に聞いた話がSDカードに入ってる」

 調査書を読み進めるほどに手に力が入ってしまい、仁が俺の肩に手をかけた。

「もう少し証拠が揃うまで、耐えろよ。下手に動くと足下をすくわれる」

「ああ、わかってる」

 仁に頼んで探らせていたのは茉莉の実家だ。

 今はほとんど付き合いがないようだと聞いてはいたが、いつまた茉莉を苦しめるかわからない。念のためと思ったが、やはり鶴見という男はクズだ。

 叩けばいくらでも埃がでてくるだけに、俺ならばどうとでもできるが……。

 茉莉や、身内のいない茉莉の母親は、そうはいかなかったはず。

 だからこそ。

 グラスに残ったワインを煽るように飲み、拳を握る。

 許さない。俺は絶対に、許さない――。