「あ、俺が買ったグラスと似てる」
その通り、ほんの少し柄が違うだけだ。
好みが同じでうれしかったと素直に言えず、どう答えたらいいか戸惑う私に彼は、ワイングラスを差し出す。
「今日は子どもたちに会わせてくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
そんなふうに言われるとますます困る。
「それで? 聞かせてくれる? どうして子どもができたって言わなかったのか」
彼の表情は決して怒ってはいなかった。口もとは微笑んでいて、むしろ気遣っているように柔らかい。
気持ちを落ち着けるように、ひと口ワインを含む。
正直に誠実に。取り返しのつかない嘘だけは言わないように。呪文のように唱える。
「航輝さんのスマートフォンが壊れたときだったの」
紗空のパーティーでスマホの故障と聞いたときは、心配したと言われてつい納得したけれど、冷静になりよく考えてみると疑念が生まれた。
「連絡が取れなくて――。てっきり捨てられたんだと思った」
その通り、ほんの少し柄が違うだけだ。
好みが同じでうれしかったと素直に言えず、どう答えたらいいか戸惑う私に彼は、ワイングラスを差し出す。
「今日は子どもたちに会わせてくれてありがとう」
「こちらこそ、ありがとう」
そんなふうに言われるとますます困る。
「それで? 聞かせてくれる? どうして子どもができたって言わなかったのか」
彼の表情は決して怒ってはいなかった。口もとは微笑んでいて、むしろ気遣っているように柔らかい。
気持ちを落ち着けるように、ひと口ワインを含む。
正直に誠実に。取り返しのつかない嘘だけは言わないように。呪文のように唱える。
「航輝さんのスマートフォンが壊れたときだったの」
紗空のパーティーでスマホの故障と聞いたときは、心配したと言われてつい納得したけれど、冷静になりよく考えてみると疑念が生まれた。
「連絡が取れなくて――。てっきり捨てられたんだと思った」



