双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~

 母に戻ると告げて家を出た。

 タクシーで向かった先は六本木。路地裏の雑居ビルにあるレストランバー氷の月。青扇学園時代からの友人、氷室(ひむろ)(じん) が趣味でオープンさせた会員制の店だ。

 つい先日燎の帰国を祝った店である。

 氷の月は会員制で、見知らぬ客を拒むゆえに看板がない。エレベーターの中に表記された案内にも店の名前はなく、雫を落とす月のマークがあるだけだ。

 エレベーターを降りて入り口の扉に向かう。

 凍った月が溶けるような柄の入った磨り硝子から人影が見える。カランカランとドアベルを鳴らして中に入ると、この店のオーナーで友人の氷室仁がカウンターの席にいた。

「いらっしゃーい」

 ニッと笑った仁が、右手を上げる。

 食事は済んでいると伝え、壁に並ぶボトルを眺めた。

「たまにはジンにするか」

 飲んだことのない国産のクラフトジンのソーダ割りを頼む。