どんな君でも愛してる


「秘密だと言ったのは、公表していなかったから。それでも人事部長や役員、うちの部長や担当者は知っていた」

「……」

「俺はノアケミカルの社長の息子だ。うちの父は社長だが、根っからの研究者だ。父は俺には経営や販売のほうをやってほしかったらしい。そういうことに詳しい上司について、新卒から二年はノアにいた」

「最初は二年もご実家の会社にいたのね。じゃあ、どうしてうちに?」

「姉が俺の上司と結婚したんだ。父は俺に一旦会社を出て、将来役立つパイプ作りをしてこいと言った。つまり、ノアの商品を販売しているSUNAに入って学んで来いということだろう」

「販売……そうか、うちはそうよね……」

「うちの会社の営業二部の取引はノア、北野化学が中心だった。俺はここに入った段階でいずれ仙台へ行くことが内定していた。仙台にノアの商品を作っている工場がいくつかあったんだ。うちの社長と父との話し合いで内密にしていたこともあり、俺の素性も人事の部長や二部の部長、仙台の支店長以外は詳しく知らなかった」