鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

***


「ねえ、里沙。わたし、昨日からなんかおかしいみたい」

 翌朝登校すると、わたしはすぐに里沙に訴えた。


 里沙は、中学のときからずっと付き合っている彼氏がいる、恋愛上級者なの。

 こういうとき、相談できる相手がすぐそばにいるって、すごく心強い。


「それはもう、間違いなく『恋』だね」

 わたしの話を最後まで静かに聞いていた里沙が、断言する。

「これが、恋……なのかなあ」


 わからない。

 そう言い切る自信がない。

 だって、こんな気持ちになったの、はじめてだから。


「なに言ってるの。そもそもナナが昨日『運命の人』だって言ったんじゃない。まあ、鐘の音はともかくとしてさ」


 恋……かあ。

 たしかに昨日は、『運命の人』だなんて思わずはしゃいじゃったけど、今まで『ときめきってなに?』っていうくらい恋愛に疎かったわたしに突然訪れた異変に、全然ついていけてない。


 ううん。実は昔一度だけ、『ときめき』に近いドキドキを経験したことがあるんだ。

 でも、その彼には、きっともう二度と会えないだろうなって思ってる。

 だって、名前も、住んでいるところも知らないんだから。