鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「和樹、隼人マーク! 絶対抜かせるな!」

 サッカー部の方から先生の大きな声が聞こえてくる。


 あっ。あれって、今朝会った三谷先輩と……岩瀬先輩?

 メガネはしていないけど、きっと岩瀬先輩だ。

 二人ともサッカー部だったんだ!


 真剣な顔つきで対峙した二人の姿から目が離せない。

 岩瀬先輩……がんばれ……!

 思わずサッカーボールを持つ手に、ぎゅっと力が入ってしまう。

 そのとき——。


「すみません! ボール、ありがとうございます」

 一年生かな? 一人のサッカー部員が、わたしの方に駆け寄ってきた。

「あ、いえ。これ、昇降口の方に落ちてました」

 お互いペコペコしているうちに、向こうの方でわっと歓声が上がる。


「だーっ、くそっ!」

 三谷先輩が、ものすごく悔しがっている。

「カウンター! ディフェンス遅れるな!」


 グラウンドを駆け回る岩瀬先輩の姿を、思わず目で追ってしまう。

 大きな声で仲間に声を掛ける姿も、流れる汗を拭う姿も、全部を目に焼き付けたくなる。


 どちらかというと、書道部とか、美術部とか、そういう静のイメージだった岩瀬先輩に、こんなアツい一面があったなんて。

 胸のドキドキが、全然収まってくれない。