鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「ま、今回だけはギリセーフってことで、見逃してやるから。さっさと学校入んな」

「おい隼人、勝手なことをするな」

 ずっと黙ってわたしと三谷先輩のやりとりを見ていた岩瀬先輩が、非難の声をあげる。

「だって、おまえもわかってるだろ。この子、どう考えてもセーフだったって」

「それはそうだが……そういうイレギュラーを一度許すと、今後……」

「そんじゃあ、今回見逃す代わりに、風紀委員に立候補してよ。こいつが委員長になってから、『風紀委員』って称号が罰ゲームみたいな扱いになっててさ」


 風紀委員……。

 それになれば、ひょっとして、岩瀬先輩と一緒に……?


「はいっ。つーことで、さっさと教室行きな」

「は、はいっ。あの……ありがとうございます」

 わたしが深々と頭を下げると、まだ不服の声をあげる岩瀬先輩をムシして、三谷先輩はひらひらと手を振ってわたしを見送ってくれた。


 風紀委員、か。

 そういえば、今日の学活で委員決めをする予定だったっけ。

 委員会なんて、わたしには縁のないものだと思っていたけど。

 ……ちょっとがんばってみようかな。


 足早に校舎に向かって歩きながら、知らないうちに、自分の口元がほころんでいることに気がついた。