鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「駅から、めちゃがんばって走ってきたんだろ? せっかく間に合いそうだったのに、なんでそこで止まっちゃったわけ? 遅刻になりたかったの?」

「あ、えと……」


 そういえばわたし、なんでこんなに岩瀬先輩に惹かれるんだろう?

 しゃべり方は不愛想だし、どちらかというとちょっと怖いくらい。

 なのに、岩瀬先輩に見つめられたら、目が逸らせなくなって。

 これが、一目惚れ……?


「あっ、わかった。オレに見惚れてたんだろ。いやむしろ、オレに遅刻を取り締まってほしかったのかな?」

 三谷先輩が、ニヤリとしながらわたしの顔を覗き込んでくる。

「い、いえっ、そんなことはまったく! 全然!」

 全力で首と両手をぶんぶん横に振る。

「ははっ、そんな必死に否定しなくてもわかってるってー。結局みんなオレに惚れちまうんだよなー」

 そんなことを言いながら、三谷先輩は顎に手を当て、パチンッとウインクする。


 な、なんなの、この人。

 たしかに陽キャで、整った目鼻立ちをしていて、いわゆるイケメンだと思うし、きっとモテるんだろうなー……とは思う。

 思うけど……ちらりと岩瀬先輩の方を見る。

 その瞬間、速さを増す心臓の鼓動。