鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

 突然名前を呼ばれ、びくんっと肩が小さく跳ねる。

「い、岩瀬先輩、おつかれさまです。こ、こんなところにいらっしゃったんですねー。向こうにいないから、もう帰られたのかと思ってましたー」

 岩瀬先輩の方を振り返ると、わたしは無理やりあははと愛想笑いを浮かべた。

「ああ。今から帰るとこだ」

「えと、あの……今日は、おめでとうございます。サッカーの試合って、わたし、はじめてみたんですけど……す、すごかったです!」


 ああっ、幼稚園児並みのわたしの語彙力!


「まあ……隼人が取り返してくれて、助かったよ」

 岩瀬先輩が、一瞬悔しそうな表情を浮かべる。

「でも! 岩瀬先輩がいなかったら、最後のあの攻撃にはつながらなかったですから。岩瀬先輩、すっごくカッコよかったです!」

 思わずぎゅっとこぶしを握りしめて、前のめりになりながら言う。


 だって、本当にカッコよかったんだもん。

 岩瀬先輩が抜かれて点を取られたときは、わたしもすっごく悔しかったけど……それを帳消しにするくらいの活躍が見れたから。


「……はじめて言われた。そんなこと」

 左手のこぶしで、口元を隠しながら岩瀬先輩がぼそりと言う。


 心なしか、頬が赤く染まっているような……。