ポーン、ポーン、ポポーン……。
しばらく行くと、ボールを蹴る音がかすかに聞こえてきた。
きっと、岩瀬先輩だ!
……で、でも、ちょっと待って。
思わずブレーキをかけ、校舎裏に入る前に立ち止まる。
今、岩瀬先輩のところなんかに行ったりしたら、『なんでこんなところに来たんだ?』って思うよね?
ひょっとしたら、わたしの気持ちにも気付かれてしまうかもしれない。
だ、ダメ。まだそんな覚悟、できてないよ。
それに、まだあの男の子と岩瀬先輩と、どっちが好きかも決めきれていないのに。
まだ岩瀬先輩に、わたしの気持ちを悟られるわけにはいかないよ。
顔をうつむかせると、回れ右して、来た道を戻ろうと、足を一歩踏み出した。
そのとき——。
「汐見?」



