鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「あ、ねえ、汐見ちゃん!」

 三谷先輩の声に振り返る。

 そして、当然のように三谷先輩の周りにいた女子も、一斉にわたしの方を見る。


『誰、あの子?』

『隼人くんの、なんなの?』

 敵意のこもった視線が、グサグサと突き刺さる。


 三谷先輩、ちょっとは状況を考えてくださいよぉ。


 なんて泣きべそをかきそうになっていたら、

「アイツ、試合のあとは、校舎裏で自主練しながら一人反省会してるはずだから。行ってホメてやってよ。今日の功労賞は、間違いなくアイツだからさ」

 そう言って、三谷先輩がわたしに向かってウインクする。

 そんな三谷先輩を見て、「キャーッ!」と小さく悲鳴が上がった。


 だから! そういう余計な誤解を生むようなことは、やめてくださいってば!


 でも三谷先輩、いっつも『ひょっとして、オレに見惚れてた?』みたいなことばかり言ってたけど、ひょっとして、わたしが岩瀬先輩のことをずっと見てたって、気付いてた……?

 うわぁ、それはそれで恥ずかしすぎるんですけど!


 ありがとうございますの気持ちを込めて三谷先輩に向かってぺこりと頭を下げると、その場から逃げるようにして駆けだした。