「ごめん、ナナ。それ、普通にチャペルの鐘の音だと思うわ」
中一のときに同じクラスになってからずっと変わらず仲よくしてくれている友だちの里沙が、わたしの両肩に手を置き、残念そうに言う。
「ううん。本当に聞こえたんだって! 岩瀬先輩と、目が合った瞬間に!」
遅刻を知らせる鐘の音だったかもだけど!
それでも、頭の中でリーンゴーンって鳴り響いたんだもん。
わたしの通う聖青学園高校には、白亜のチャペルがあって、チャイムの代わりに鐘の音が時を教えてくれるの。
学校見学に来たとき、あの鐘の音をはじめて聞いて、一目惚れならぬ一耳惚れをしたんだ。
わたし、この鐘の音の聞こえる学校に通いたいって。
まさかこの鐘の音が、わたしを運命の人と巡り会わせてくれるだなんて、思ってもみなかったけど。



