「おー、ホントに来てくれたんだ、菜々子ちゃん」
わたしのことを覚えてくれていたのか、風紀委員会の会場となっている3年5組の教室に足を踏み入れた瞬間、三谷先輩が声を掛けてくれた。
「はい。えと……よろしくお願いしますっ」
ぺこりと素早く頭を下げると、そそくさと廊下側の一番うしろの席へと向かう。
カバンを下ろしながら、こっそり岩瀬先輩の姿を探す。
……あれっ、いない?
え、ちょっと待って。
岩瀬先輩、まさか風紀委員じゃないなんてこと……。
そんな不安が頭をよぎった瞬間——ガラガラガラッ。
うしろの扉を開けて、一人の男子が教室に入ってきた瞬間、ドキンと心臓が飛び跳ねる。
「い、岩瀬先輩……!」
思わず上ずった声が出てしまい、慌てて口を押える。
そんなわたしのことを、岩瀬先輩がチラッと見下ろす。
「……ああ。昨日の」
ぼそりと言うと、すっと教室の前方にいる三谷先輩に視線を移す。
「プリント、もらってきた」
「おお、ごくろーさん」
三谷先輩と軽く言葉を交わしながら、岩瀬先輩が机と机の間を歩いていく。
「そんじゃ、委員長も来たことだし、さっそくはじめるかー」
三谷先輩の、のんびりとした掛け声が教室内に響き、さっそく委員会がはじまった。



