鐘の音が、運命の人だって教えてくれた。

「なにを突然言い出したのかと思ったら! ひょっとしてだけど、あの昔ナナを助けてくれたっていう男の子のこと? 別に先輩と同時に好きになったって、そんなのふしだらのうちに入らないって」

「でも、こういうのを二股っていうんじゃ……」

「言わない。だって、どっちとも付き合ってるわけじゃないんでしょ?」

「それは、そうだけど……」


 でも、同時に好きになるなんて、絶対におかしいし、ダメなことだよね⁉


「じゃあ、ナナはどっちのことが好きなの? 昔の男? 今の男?」

 って、ちょっと里沙、言い方!


 でも、あの男の子を思い出したときのほわほわした気持ちも、岩瀬先輩を想ったときのドキドキも、種類が違いすぎて、どっちが好きかなんて……。


「うーん、選べないかあ。ま、先輩とはこれから風紀委員を一緒にするんでしょ? だったら、ゆっくり自分の気持ちと向き合ってみればいいんじゃない? 恋をしたからって、今すぐどうこうしなくちゃいけないわけでもないんだしさ」

「そっか。……うん。そうだよね」

「で、今日さっそく最初の委員会があるんでしょ? がんばって、先輩とお近づきになんないとだね」

「へ⁉ う、うん……」


 岩瀬先輩のことを思い出しただけで、顔が一気に熱くなる。


「大丈夫だよ。今の恋するナナ、すっごくかわいいから」

 そう言いながら、里沙がぎゅっとわたしのことを抱きしめてくれた。