だがしかし、鹿は駄菓子屋なのである。

鹿は駄菓子のせいで歯科医に叱られた。

しかも鹿の歯科医だから視界が広い。

叱られて当然の鹿である。

しかし、歯科医の鹿もまた駄菓子好きであった。

叱って駄菓子屋の死活問題にはなりたくない。

歯科医の鹿は考えた。

叱らず、貸しを作ってしまおう。と。

かくかくしかじか。

鹿は然と駄菓子屋の鹿を見届けた。

それからある年の4月。

駄菓子屋には司会の鹿と歯科医の鹿が。

歯科医の鹿はこう尋ねる。

「あれから歯間はどうでしょう。」

司会の鹿はこう答える。

「これから仕方なく叱られるでしょう。」

歯科医の鹿はまた尋ねる。

「司会の鹿には聞いてない。然るべき鹿が答えるべきだ。」

駄菓子屋の鹿はこう言った。


「歯科医の鹿さん。歯間の件は有難う。
しかし、鹿の妻の尻に敷かれているため、駄菓子屋は貸し屋となりました。
元駄菓子屋の鹿は貸しを作ることは出来ても売る事は出来ません。」


歯科医の鹿はしかめっ面で去っていった。

元駄菓子屋の鹿は呟く。
「鹿の仕官の言う通り、歯科医の鹿は菓子が欲しかっただけだったのだなぁ。」

妻の鹿なんていやしない。
元駄菓子屋も専らの嘘。

そうして現在も駄菓子屋の鹿は健在。
しかし、場所は私家である。