日本資本の会社とはいえ、ここは海外。
能力主義で、何かしでかせばすぐに切られてしまうのも事実。
もちろん私だってそれを承知で勤務してはいたのだが、現実はやはり厳しかった。

「晶さん、ごめんなさい」
「いいのよ、自分がやったことだもの。優香ちゃんは気にしないで」
「でも・・・」

日本人男性客との騒動から数日後、私はホテルを首になった。
もちろん騒ぎを起こした男性客の行動にもかなり問題がありそのことを非難する声もあったが、ホテル支配人の鶴の一声で決まってしまった。
これは後になってわかったことだが、騒動を起こした男性客は大物政治家の息子だったらしいから、おそらく色んな忖度が働いての結果だったのだろう。

「じゃあね」

バイバイと仲間たちに明るく手を振り、私は社員寮になっていたマンションを後にした。