フウ―。
テラスへ出て、私はやっと息をついた。
南国のマレーシアの昼間は暑くて外出するのもためらうくらいだけれど、夕方になれば日差しも弱まり心地のいい風が吹くようになる。
私は頬をなでるように吹く爽やかな風を感じてテラスに佇んでいた。
アルバイトとはいえ、私は一体何をしているんだろう。
アクシデントに見舞われたのは事実だけれど、圭史さんのお金で贅沢をしているだけにも思える。
こんな事なら素直にお金を借りて日本に帰る方がよかったのかもしれないな。
日本から遠く離れた南国の夕日が寂しい気持ちにさせたのか、私は一人肩を落とした。
その時、
「随分化けたものだな。今度はこんな場所で男漁りか?」
意地の悪い日本語が聞こえてきた。
この声は勤めていたホテルを辞める原因を作った迷彩パンツの男。
決して会いたい相手ではないけれど、忘れることができない声だ
「何なら俺が買ってやろうか?一晩いくらだ?」
「失礼ね」
伸ばしてきた男性の腕を、私は払いのけた。
ホテルではTシャツにサンダル履きだったくせに今はタキシード姿で黙っていればどこかのご令息に見えなくもないが、私は彼の本性を知っている。
「ここはお前なんかが来るところじゃない。さっさと消えろ」
少し声を潜めて投げかける言葉には棘があるが、私は無視するように背中を向けた。
こんな所で騒ぎを起こすわけにはいかないとの一心で、聞こえないふりを貫いていると、
「おい、無視するのかよ。生意気だなあ」
少しずつ大きくなっていく声。
さすがにこのままではマズイと立ち去ろうとした瞬間、
「キャッ」
いきなり顔に冷たい衝撃があり声が出た。
男がテーブルに置いてあったグラスの水を私に向かって投げかけたのだ。
「何するのよ」
「すまない手が滑った」
ニタニタと笑いながら私を見る目は少しも悪いとは思っていない。
そうか、ホテルで私がしたことを男はやり返したのだと気が付いた。
しかし、あの時と今では状況が違いすぎる。
私は我慢できずに男に詰め寄った。
テラスへ出て、私はやっと息をついた。
南国のマレーシアの昼間は暑くて外出するのもためらうくらいだけれど、夕方になれば日差しも弱まり心地のいい風が吹くようになる。
私は頬をなでるように吹く爽やかな風を感じてテラスに佇んでいた。
アルバイトとはいえ、私は一体何をしているんだろう。
アクシデントに見舞われたのは事実だけれど、圭史さんのお金で贅沢をしているだけにも思える。
こんな事なら素直にお金を借りて日本に帰る方がよかったのかもしれないな。
日本から遠く離れた南国の夕日が寂しい気持ちにさせたのか、私は一人肩を落とした。
その時、
「随分化けたものだな。今度はこんな場所で男漁りか?」
意地の悪い日本語が聞こえてきた。
この声は勤めていたホテルを辞める原因を作った迷彩パンツの男。
決して会いたい相手ではないけれど、忘れることができない声だ
「何なら俺が買ってやろうか?一晩いくらだ?」
「失礼ね」
伸ばしてきた男性の腕を、私は払いのけた。
ホテルではTシャツにサンダル履きだったくせに今はタキシード姿で黙っていればどこかのご令息に見えなくもないが、私は彼の本性を知っている。
「ここはお前なんかが来るところじゃない。さっさと消えろ」
少し声を潜めて投げかける言葉には棘があるが、私は無視するように背中を向けた。
こんな所で騒ぎを起こすわけにはいかないとの一心で、聞こえないふりを貫いていると、
「おい、無視するのかよ。生意気だなあ」
少しずつ大きくなっていく声。
さすがにこのままではマズイと立ち去ろうとした瞬間、
「キャッ」
いきなり顔に冷たい衝撃があり声が出た。
男がテーブルに置いてあったグラスの水を私に向かって投げかけたのだ。
「何するのよ」
「すまない手が滑った」
ニタニタと笑いながら私を見る目は少しも悪いとは思っていない。
そうか、ホテルで私がしたことを男はやり返したのだと気が付いた。
しかし、あの時と今では状況が違いすぎる。
私は我慢できずに男に詰め寄った。



