契約シンデレラ

「晶、落ち着いた」
「ええ」

緊張する私に圭史さんが飲み物を渡してくれる。
私の方も時間が経つにつれて緊張もほどけ、少しずつリラックスしてきた。

「圭史さん、まだご挨拶回りがあるでしょ?私は大丈夫ですから、行ってください」

ふたりで会場に入ってから何度も呼び止められて挨拶をしていた圭史さんだけど、まだまだご挨拶しなければならない人はいるはずで、私はそのことが気になっていた。
食事が始まれば一緒に席に着かなければいけないが、それまでは圭史さん一人の方が動きやすいはずで、私のために圭史さんの手を止めてしまうことが申し訳ないと感じてしまった。

「じゃあ、少しだけ行ってくるよ。広間の奥からテラスや庭に出られるようになっているから、休みたくなったらテラスに出てもいい」
「はい、そうします」

圭史さんと別れ、普段見慣れない格好をした大勢の人に囲まれ疲れてしまった私は、少し風にあたろうとテラスの方へと向かうことにした。