契約シンデレラ

「さすがに素敵なお部屋ね」
「ええ」

居候の身としては『ありがとうございます』なんて言うのもおかしな気がして、ただ相槌を打つ。

「晶さんはこのままずっとここにいるつもりなの?」
「え?」

そう言えば以前咲奈さんに会った時、マンションを出るべきだと言われたし、自分の立場をわきまえろとも言われた。
その言葉に触発されて、一旦はここを出ようと決心したのだが・・・

「結局ここに居座るのね」
さげすむような冷たい視線。

「私と圭史さんで決めたことです」

外野から口を挟まないでくださいの気持ちを込めたのだが、咲奈さんの表情はどんどん険しくなっていく。

「図々しい人ね。何もできないくせに」

咲奈さんは本当に圭史さんのことが好きなのだと思う。
周囲からも許嫁として見られているようだから、将来のことだって考えていたのかもしれない。
でもそこには、圭史さんの意思が入っていない。

「咲奈さんに圭史さんの何がわかるって言うんですか?」

なぜだろう、普段ならこんな言い方はしないのに。
私は挑戦的に言い返してしまった。