契約シンデレラ

「もしもし」

一旦ソファーから体を起こし、スマホを手にした圭史さんが眉間にしわを寄せる。
どうやらあまり良くない電話のようだ。

「あー、あー、え?」

どんどんと険しくなっていく。圭史さんの顔。
漏れてくるのは聞き覚えのない男性の声。
仕事の用件なら森山秘書課長が電話を入れるはずだから、もしかしたら仕事以外の用事なのかもしれないが、どちらにしてもその表情はなんだかのトラブルがあったことを物語っている。

それからしばらく圭史さんは電話を持ちながら天を仰いでいた。
かれこれ10分近く喋っていた気がする。
言葉少なに相槌を打ちながら、最後にはわかったと一言だけ言って電話を切ってしまった。