契約シンデレラ

「そう言えば、朝食まだですよね?」
「ああ」
「何か作ります」

話の矛先を変えたくて、私はキッチンへと向かった。
大理石張りで、広くて、機能性も抜群のシステムキッチン。
独立型のアイランドキッチンの周囲には収納も満載で、使いやすさだって文句なし。
私は早速冷蔵庫から野菜と卵を取り出した。
そう言えば、私の好みで購入したトングやカップやいくつかの調理用品はこの先どうするんだろう。
そう思ってぐるりと辺りを見回すと、壁にかけられたエプロンやキッチンマットや手を拭くためのハンドタオルのすべてが圭史さんと二人で選んだものだ。

クスン。
なぜか熱いものが込み上げてきて、私は顔を覆った。
自分の気持ちに嘘をつきたくはない。
それでも、圭史さんのためを思うと・・・

「晶、ここにいろよ。ずっと俺の隣りにいろ」
いつの間にかキッチンへとやって来ていた圭史さんに後ろから抱きしめられた。

「圭史さん・・・」

それまで抑えていた感情が堰を切ったようにあふれ出し、涙が流れた。