契約シンデレラ

「なあ晶、そろそろ元の生活に戻らないか？」
「それは・・・」

頭の良い真也さんのことだから、私と圭史さんの関係に何か事情があるのだと気が付いているのかもしれない。
それでもすべてを話してしまうことはできず、言葉に詰まった。

「よかったらうちの大学に来ないか？」
「え？」
あまりにも唐突で、反応できなかった。

「元々晶がやりたかったのは看護師の仕事だろ？うちの大学病院に就職できるように推薦するから、もう一度やり直さないか？」
「それは・・・」

看護師になるために4年間も勉強をしてきたのだから、もう一度の現場で働きたい気持ちはある。
しかし、以前勤めていた総合病院でのことがトラウマになっている。

「おじさんのことはどこへ勤めても一緒だろ_？実際昨日も借金取りが来たって、社内で噂になっている」
「あっ」

やはり、真也さんの耳にも入ったんだ。
ということは圭史さんも知っているのだろうか？

「どこにいても一緒なら、うちに来いよ。同じ職場なら俺だって多少は守ってやれる」
「私は別に・・・」

私は誰かに守ってほしいわけではない。
父さんのことだって割り切らなければいけないとわかっている。でも・・・

「とにかく、社長のマンションを出ろ。そして会社も辞めるんだ。そうしないと、晶はずっと社長に振り回されることになる」
「真也さん・・・」

結局すぐに答えは出ず、「少し考えさせてください」と返事をして真也さんと別れた。