契約シンデレラ

「父さんの借金ねえ・・・」

話を聞き終えて、ついため息が出てしまった。
そんなことだろうとは思っていた。
今まで定職に就かず世界を放浪してきた父さんだから借金だってあるのだろうと予想も出来るし、おそらく私が龍ヶ崎建設の就職したことがうれしくて元友人である男性に話してしまったんだろう。

「それでいくらなの?」
「利息を込みで400万」
「400万」
高額だな。
今の私にはとてもじゃないけれど用意できる金額じゃない。

「私もそんなにはお金がないのよ。とりあえず手元にあるだけでいい?」
「ああ」

ポケットに入れていた財布を覗いてみると、入っていたのは数万年の現金。
これでも今の私にはほぼ全財産なのだが、これを渡さなければ帰ってくれる気がしない。

「悪いけれど、会社にはもう」
来ないで欲しいのと言おうとしたが、
「じゃあ連絡先を教えてくれ」
「ああ・・・」
結局言葉に詰まった。

考えてみれば今の私には自宅がない。
もちろん携帯の連絡先なんて教えるつもりは無いし、そうなったら借金取りの来る先は会社しかないわけだ。
こうしている間にも、周囲から感じる視線が痛い。
とにかく早くこの場から逃げ出したい私は、お財布の入っていたお札を渡しその場を離れた。
これで終わったと思っていたのだが・・・

この時の私は圭史さんがどれだけ周囲から注目されている人かということと、その人の隣に立つことの意味を理解できていなかった。