契約シンデレラ

「行ってらっしゃいませ」

秘書らしく頭を下げて圭史さんを見送る。
最後までブツブツと文句を言っていた圭史さんだったが、スケジュールに追われ社長室を出て行った。

「さあ、仕事をしよう」

一人になった社長室で、気合を入れる。
いくらトラブルに見舞われていても通常の業務はいつも通り発生する訳で、どんなに辛くても仕事は進めていくしかない。
そういう意味で私は頑張るしかないのだ。

トントン。
「お邪魔します」

執務室のデスクに書類を広げ仕事を始めようとしたタイミングで、社長秘書室のドアがノックされて声がかかった。

「咲奈さん、どうして？」

社内で会うとは思ってみなかった人の登場に、私は驚いてしまった。